こんにちは、勤務医の鍵岡です。

さて、みなさんはご自分の前歯の根っこが、奥歯の根っこが、それぞれどのような形をしているか、イメージすることができますか? では本数は? 神経はどこを通っているでしょう? おそらく、これまでに歯の根の治療(以下根管治療)を受けられた方、今受けている方でも、自分の歯の根がどんな形をしていて、どの部分をどうやって治療されるのか、思い描くことができる方は多くないのではないでしょうか。そこで今回は、みなさんに歯の根の構造を知っていただきたいと思います。一度にすべてを紹介するのは難しいので、ここでは、上の前歯と奥歯に焦点を絞って簡単にご紹介したいと思います。

先ず、前歯と奥歯では、根の本数や形が異なります。前歯(中央から3番目の歯まで)の根は1本で、断面は丸みのある三角形です。そして、根の中には神経が通る管(以下根管)がありますが、そのつくりも単純で、根の数と同じ1本です。そのため、根管治療も比較的容易に行えます。

次に、手前寄りの奥歯(4 ,5番目の歯 ― 小臼歯)です。根は扁平で、1本ないし2本が殆どです。後者でも、途中までは1本で先が二又になっている場合が多いです。根管の数は2本であることが多いのですが、時に途中で合流したり、また枝分れしたりとバリエーションに富んでいます。畢竟、根管治療の難易度も上がります。

最後に、最も奥の方にある奥歯(6 ,7番目の歯 ― 大臼歯)です。根の数は3本です。根管の数は各根につき1本、計3本が基本ですが、約半分の人には4本目が存在し、根管治療の際にしばしば見落とされます。そして何より、根が湾曲していることが多く、それに伴い根管も湾曲するため、根管治療の器具が根の先まで届かないことも少なくありません。こういった場合に先日のコラムで紹介されていたNi-Tiファイルという器具が有用なのですが、それでも根管治療の難易度としては依然高いと言えます。

このように、前歯から奥歯へいくに従い、根管の形が複雑になってくるため、特に大臼歯の根管治療は難しいとされています。みなさんも根管治療を受けるとなったとき、治療される歯はどんな形をしているのだろう、歯医者さんは歯の根のどこを目指して治療しているのだろう、などなど、普段は考えないような歯の根の構造について、思いを馳せてみてください。